橋本行政書士事務所
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遺言・相続・エンディングノート

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遺言・相続・エンディングノートQ&A(新しいものほど上に来ます)

2016年12月19日

Q.「預貯金は当然に分割されず、遺産分割の対象となる」として、これまでの判例を変更した2016年12月19日の最高裁決定について教えてください。

A.相続が生じた場合の預貯金をめぐる争いに関し、2016年12月19日最高裁判所の判断が下されました。「預貯金は当然に分割されず、遺産分割の対象となる」として、これまでの判例を変更したのです。

以下は、毎日新聞サイトからの抜粋です。
>亡くなった人の預貯金を親族がどう分けるか争った相続の審判を巡り、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は19日の決定で、「預貯金は法定相続の割合で機械的に分配されず、話し合いなどで取り分を決められる『遺産分割』の対象となる」との判断を示した。預貯金を遺産分割の対象外としてきた判例を変えるもので、一部の相続人に生前贈与があっても機械的配分になり不平等を生んでいた問題が解消される。<
毎日新聞2016年12月19日より抜粋
詳しくは、こちらのサイトへ → 毎日新聞2016年12月19日

これまでの流れを概観してみましょう。
1 可分債権について 
 相続財産の可分債権は法律上当然に分割され、共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するとされていました(最判昭29.4.8)。今回の決定はこの可分債権の当然分割についての判例を変更したものです。

2 金銭について
 預貯金としてではなく、現金として保管している金銭については、他の相続人は自己の相続分に相当する支払いを求めることはできないとして、預貯金債権とは異なる扱いをしています(最判平4.4.10)。

3 定額郵便貯金について
 貯金でありますが、通常貯金ではない定額貯金の場合は、1の可分債権とは異なり、当然分割の対象とはされず、遺産分割手続きによるべきとされました(最判平22.10.8)。

4 株式・投資信託・国債について
 いずれも当然分割の対象ではないとされています(最判平26.2.25)。
(以上、「模範小六法 平成29年版」判例六法編集委員会編・三省堂参照)

 つまり、今回の最高裁の判断により、可分債権も含めておよそ相続財産のすべてが当然分割の対象とはならず、遺産分割の対象となることになったのです。これにより、相続人のうち生前贈与を受けていない相続人の不利益が救済される可能性が広がりました。ただし、遺産分割の重要性がますます高まったため、うまく協議が整えばいいですが、協議が整わない場合は、調停や審判、さらには訴訟という裁判所での手続きが必要となる事案が増すことになるのは否めません。
                                                              以上

※ 相続・遺言・エンディングノート、成年後見等でお困りの場合は、当事務所へお気軽にご相談ください。

2015年4月5日

Q.「母の面倒を見る」ことを条件とした遺産分割協議は可能か。
 先日父が亡くなりました。相続人は母と長男である兄と長女である私の3人です。「兄が父の遺産である自宅とその敷地を相続することにして、その代わり母の面倒をみる」という遺産分割協議は可能ですか。また、その後、兄が母の面倒をみなくなった場合、遺産分割協議を解除することは可能ですか。また、他によい方法はありませんか。
 なお、兄が母の面倒をみるというのであれば、私は相続放棄をしてもよいと考えています。このような条件付の相続放棄というものは認められますか。


A. 「共同相続人は、・・・被相続人が遺言で禁止した場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる」とされています(民法907条第1項)。この遺産分割協議に質問のような内容を規定することは可能です。
 ただし、遺産分割協議の内容として、「兄は、将来にわたり母親の面倒をみる」といういわゆる「なす債務」を協議内容とした場合、もしその協議内容の履行を怠ったとしても、遺産分割協議自体はその不履行を理由に民法541条により解除することはできないというのが判例です(最判平元2・9)。
 これに対し、全員の合意により遺産分割協議の全部又は一部を解除した上で、改めて分割協議を成立させることは認められています(最判平2・9・9)。したがって、改めて合意により遺産分割協議のやり直しができるのであれば、それによることができますが、実際はその時に兄が合意に応じてくれなければ問題は解決しません。

 そこで、他の方法ですが、直系血族間では扶養義務を負いますから(民法877条第1項)、子であるお二人が母の扶養義務者となります。この扶養義務を根拠として手立てをとることが考えられます。
 この場合の扶養の順位・程度・方法などの扶養義務の内容を決定する明確な基準はなく、すべて当事者の協議又は家庭裁判所の審判によって決められることになります(民法878条、879条)。この扶養の協議によって母の面倒をどうするかを決めることが可能です。

 最後の「条件付相続放棄」というものは無理だと思います。相続放棄とは、その者は初めから相続人ではなかったことになるという効果を生じる意思表示ですが、その効力は絶対でかつ単純なものであることとされており、将来発生が不確実な条件を付けることは、いわゆる法的安定性を損なうと考えられるからです。

 以上より、結論としては
@ 条件付相続放棄というものは無理
A 遺産分割協議を行い、その中に「兄が母を同居させ、面倒をみる」などの条項を入れる。
B Aの遺産分割協議書とは別に、扶養の協議を行い、協議書を作成する。
ということになるかと思います。
                                                        
  
2015年3月15日

Q.「遺言と遺留分」
 父が亡くなりましたが、父は遺言を残しており、父の遺産は全て兄が取得することとなりました。このような場合でも私の取り分はあるのでしょうか?遺留分というものがあると聞きましたが遺留分とは何ですか?遺留分の請求はいつまでできますか?
 

A.遺言がある場合は、法定相続分に優先しますが、相続人側としても最低限の相続分を確保したいとの要請があり、遺留分とはこのような相続人の最低限の取得分をいいます。そして、被相続人の兄弟姉妹以外の相続人であれば、このような遺留分をもちます。遺留分の割合は、直系尊属のみが相続人であれば相続財産の3分の1、それ以外の場合は2分の1となります(民法1028条)。

 遺留分が侵害された場合、遺留分権利者は遺留分の減殺請求というものができます。この場合の行使期間は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年以内です。そして、知らなくても10年経過したときは消滅します(民法1042条)。ご質問の内容では、相続の事実も、また減殺の事実も知っておられると思われますから、行使期間は1年以内となります。

 遺留分を侵害する遺言も有効ですから、遺留分を確保したい場合は、上記期間内に必ず請求しなくてはなりません。
 
 減殺請求の方法は、必ずしも裁判上の請求である必要はなく、裁判外でも可能です(最判昭41.7.14)。期間が経過する前に内容証明郵便で請求しておくのがよいでしょう。その際、必ず配達証明書付きにしておきましょう。
 なお、減殺請求後に生じる目的物の返還請求権等は時効にかからないとされています(最判昭57.3.4)。
.4)。
2015年3月12日

Q.「
死後のペットの世話」
 自分の死後、ペットの世話を誰にどのように任せるか?


A.
 ペットを飼っている方にとってペットは家族同様であり、仮に自分が先に亡くなった場合、そのペットの世話をどうするかかなり悩むところです。

 ご夫婦でペットを飼っていた場合で、ご夫婦どちらかがお亡くなりになった場合は、他方配偶者がその相続人になりますので、あまり問題はないでしょう。しかし、ご夫婦ともにお亡くなりになったときはどうなるでしょう。同居しているお子さんがいれば、そのお子さんが相続人の一人として面倒を見てくれる可能性が大きいので何とかなるでしょう。でも、お子さんがいても、遠方であるとか、動物は苦手であるとかとなると、問題が生じます。また、そもそも相続人がいない場合は誰か世話をしてくれる人を探さなければなりません。

 このような場合に備えるものとしては、以下の方法が考えられます。
 @ まず、「負担付遺贈」(民法1002条)という方法が考えられます。
 「負担付遺贈」とは、遺贈者が受遺者に対して一定の義務を課す遺贈をいいます。特に相続人がいないような場合は第三者を受贈者とする負担付遺贈を内容とする遺言書を作成すると、ご夫婦なき後その受贈者である第三者がペットの面倒をみることになります。その場合の遺言書には「○○の財産をあげるので、その代わり△△ペットのお世話をして欲 しい」というような記載をします。
 問題は、ペットのお世話をしてくれる人を誰にするのか、という点です。遺贈は遺贈者の「一方的な意思」で行うことができますので、遺贈者の意思で指名することができるのですが、受遺者に指名された人は、必ず遺贈を受けなければならない訳ではありません。受遺者に指名された人は遺贈を拒否することもできますので、予めペットの面倒を見てもらいたい人に、事前にしっかりと説明をして了解をとっておくようにしましょう。
 なお、たとえご夫婦であっても、共同遺言は無効とされますので(民法975条)、遺言書は各人がそれぞれ別に作成しておく必要があります。
 
 A 次に、「死因贈与」あるいは「生前贈与」という方法が考えられます。
 これらの場合は、あくまで贈与契約なので、遺贈者と受遺者の間で契約(贈与契約)を結ぶことになります。遺贈の場合は一方的な意思表示によりますので、受遺者に拒否されるとペットの面倒は確保できなくなりますが、贈与の場合は双方合意のもとでの契約となるため、拒否ということはありません。
 このうち、死因贈与は贈与者の死亡により効力が発生するものですが、生前贈与は、生前に財産を贈与するもので、贈与としては通常の形態です。
 ただし、自分の死後、確実に面倒を見てもらっているかを確かめることはできません。そこで、このような不安に備えて「遺言執行者」を選任・指名しておくことが有効です。遺言執行者を選任・指名しておけば、遺言書の通りにペットの世話をしているかをチェックしてもらうことができるからです。この場合も信頼できる遺言執行者を誰にするかが重要です。
 
 以上のような方法が考えられますが、いずれにしても大切なことは、ペットの面倒をしっかり見てくれる人を探すこと、その人に思いをお話しし、きちんとその思いを受けとめてもらうことがポイントとなります。
 なお、遺言書や贈与契約書を作る場合にはできるだけ公正証書にしておくことをお勧めします。



以下は、項目順

目 次 ■遺言・相続
1 相続手続きの流れと留意点
2 相続人は誰か
3 代襲相続とは何か
4 相続分はどれくらいか

5 相続放棄・限定承認とは何か
6 相続は必ず得か
7 相続税の申告は必ずしなければならないか

8 遺留分とは何か
9 遺産分割協議書は作るべきか
10 遺言の方法
11 胎児の地位
12 胎児のための登記は可能か
13 相続税がかかる財産にはどのようなものがあるか
14 遺言とは何か、遺言の方法
15 遺言をしておいた方がよい場合とは
16 行政書士に依頼するメリット
17 相続手続きに必要な書類

■エンディングノート
1 遺言とエンディングノートの違い
2 エンディングノートに記入する内容

■論点研究
1 特別受益者への贈与は遺留分減殺の対象となるのか?

遺言・相続

質 問 回 答
1 相続手続きの流れと留意点
被相続人の死亡
 葬儀の準備と死亡届けの提出
  死亡届は、被相続人した日から7日以内に死亡診断書を添付して市区町村へ提出する。
葬 儀
□ 葬式費用は相続財産から控除できるので、葬式費用の領収証類は整理保管する。
初七日
□ 遺言書の有無を確認する。
  遺言書を発見した場合は、公正証書遺言を除き、開封せずに家庭裁判所の検認手続き経なければならない。
四十九日
□ 相続人は誰かを調査する。
□ 同時に、相続財産及び相続債務の調査を行い、相続放棄または限定承認をするかどうかを決定する。
相続の放棄または限定承認  ※ 相続人が自分のために相続の開始があったことを知ってから3ヶ月以内
□ 相続放棄または限定承認をした場合は、家庭所から受け取った受理書を保管する。
所得税の準確定申告     ※ 相続人が相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内
□ 準確定申告を行う。被相続人の死亡日までの所得を税務署に申告する。
□ 相続財産と相続債務のリストを作成する。
□ 相続財産の評価をする。評価方法については、税理士などに相談する。
□ 遺産分割の協議を行い、協議書を作成する(相続人全員の署名と実印が必要)。
□ 遺産分割協議が調わない場合は、調停申立を行い、調停調書・審判書を作成する。
□ 調停や審判も調わない場合は、訴訟手続きとなる。
□ 相続税の申告書を作成する。納付の方法(延納や物納の可否)を検討する。
相続税の申告と納付     ※ 相続人が相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内
□ その後は、相続財産の名義変更手続きを行う。
  預貯金名義、不動産(土地・家屋)名義、有価証券、電話債権など
2 相続人には誰がなれますか?  相続人になれる人は、法律上決まっています(これを「法定相続人」といいます)。
 法定相続人は、子・直系尊属・兄弟姉妹・配偶者です。それ以外は、いくら親族であっても相続人にはなれません。
 このうち、子・直系尊属・兄弟姉妹はその順番に応じて優先順位があります。すなわち、子がいる場合は直系尊属と兄弟姉妹は相続人となることはできず、子がいない場合に直系尊属が相続に人となることができ、子・直系尊属ともいない場合に兄弟姉妹が相続人となることができます。丁度野球の打順のようなものです。
 ちなみに、配偶者は常に相続人となれます。
3 代襲相続って何ですか?  代襲相続とは、被相続人の死亡以前に、相続人となるべき子・兄弟姉妹が死亡などにより相続権を失っているときに、その者の子などが代わりに相続分を相続するというものです。代襲相続する者を「代襲相続人」といいます。
 代襲が認められる場合を「代襲原因」といい、死亡の他、相続欠格・廃除なども含まれます。ただし、相続放棄については代襲原因とは認められません。
 代襲は、相続人が被相続人の子の場合は、「再代襲」(被相続人の孫が相続人となる)、「再々代襲」(被相続人のひ孫が相続人となる)と続きます。これに対し、兄弟姉妹の場合は、代襲は1回限りで再代襲は認められません。
4 相続でどれくらいもらえますか?  遺言で指定された場合を除き、相続分は法律上決まっています(これを「法定相続分」といいます)。

@ 子と配偶者が相続人の場合は、子と配偶者がそれぞれ2分1ずつ  そして、子が複数いる場合は、子の相続分を子の人数分で平等に分け合います。ここにいう「子」とは、実子だけでなく養子も含みます。すなわち、実子も養子も法定相続分においては平等に扱われます。
 なお、かつては嫡出子(婚姻中に生まれた子)と非嫡出子(婚姻外で生まれた子)では差があり、非嫡出子の法定相続分は嫡出子の2分の1となっていましたが、平成25年の民法改正により、現在は非嫡出子と嫡出子の割合は平等となっています。

A 直系尊属と配偶者の場合は、直系尊属が3分の1、配偶者は3の2ずつ

B 兄弟姉妹と配偶者の場合は、兄弟姉妹が4分の1、配偶者は4分の3ずつ
  そして、兄弟姉妹が複数いる場合は、兄弟姉妹の相続分をその数に応じて均等に分け合います。ただし、兄弟姉妹のうち、両方の親を共通にする兄弟姉妹(これを「全血の兄弟姉妹」といいます)と片方の親のみ共通にする兄弟姉妹(これを「半血の兄弟姉妹」といいます)とでは差があり、半血の兄弟姉妹の法定相続分は全血の兄弟姉妹の2分の1となっています。

※ あなたの相続分を計算してみましょう。→相続人と相続分
5 相続放棄、限定承認とは何ですか?
相続を望まない場合はどうしたらいいですか?
(1) 相続放棄 
 相続放棄とは、相続人となる資格を完全に放棄することをいいます。単独ででき、相続放棄すると、その者は最初から相続人ではないことになります。相続する財産よりも相続する債務の方が大きい場合に有効な方法です。
 ただし、放棄できる期間に制限があり、相続人にあたる人が相続があったことを知った日から原則として3ヶ月以内に家庭裁判所に放棄の申述(申立て)をしないと単純承認したものとみなされますので、注意が必要です。そして、債権者からの取立てに対抗するため、裁判所から相続放棄申述証明書を交付してもらっておきましょう。

(2) 限定承認
 限定承認とは、相続財産を精算して、マイナス方が大きい場合にプラスの財産の範囲で債務を承継するというものです。
 ただし、相続放棄と異なり、相続人が複数いる場合(共同相続)にはその全員が共同してでないと限定承認は認められません。また、債務の弁済手続きなどかなり面倒な手続きを要します。
 また、相続放棄と同様に、相続を知ってから原則として3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述しないと、単純承認したものとみなされます。
6 相続は必ず得なのですか?  相続とは、亡くなった方(被相続人といいます)の権利義務などが、その相続人に引き継がれる制度です。相続では義務(借金などの債務)も承継されますので、相続人にとって必ずプラスになるとは限りません。よくあるケースとして、被相続人(たとえば父親など)が他人の保証人となっていて、その他人が破産していた、あるいは破産までいかなくても借金を返していないような場合です。このようなケースですと、相続人の方も被相続人が保証人であったことを知らない場合が多く、相続後債権者から請求を受けてはじめて事の重大さに気づくということがあります。
      
7 相続税の申告は必ずしなければいけませんか?
 相続税は、相続があってから10ヶ月以内に申告しなければなりません。この期限にも注意しましょう。
 相続税の申告義務があるのは、正味の相続財産額が、一定の控除額 [3,000万円+(600万円×法定相続人の数)]を超えた場合です(平成27年1月1日以降)。例えば、夫婦と子二人の4人家族で夫(父)が死亡した場合の相続人は妻と子二人の合計3人ですが、この場合の控除額は3,000万円+1,800万円(600万円×3人)の合計4,800万円となります。相続財産がこの額を超える場合は相続税の申告義務がありますが、この額を下回る場合は申告義務はありません。明らかに上回っている場合や明らかに下回っている場合は判断が容易ですが、微妙な場合は税理等に相談されることをお勧めします。
8 遺留分って何ですか?
 遺言などで相続分がない子・親・配偶者には法定相続分の2分の1が確保されます。これを遺留分(いりゅうぶん)といい、いわば最低限の相続分です。ただし、遺留分を侵害する遺言も無効ではなく、遺留分権者が請求しないと認められません。
9 遺産分割協議書はつくるべきですか?  遺産分割協議書(いさんぶんかつきょうぎしょ)とは、相続人同士で合意して相続分を決める書面です。
 相続人全員の署名と実印が必要で、一人でも相続人を除いて遺産分割をしても無効となりますので注意が必要です。
 不動産の名義書換(登記変更)や銀行預金の払戻しなどで必要となりますので、必ず文書で作成しておきましょう。
 よくあるケースとして、相続が10年も前にあったのに、遺産分割協議をしていないため、きちんと相続分をもらってないというような場合です。確かに遺産分割協議をいつまでにしなければならないという規制はないのですが、相続後の期間が長引けば長引くほど協議が難しくなりますので、やはり早めに遺産分割協議をしておくべきでしょう。目処として、四十九日を過ぎたころから、相続税申告期限である相続開始後10ヶ月ころまでに作成するようにしましょう。
10 遺言の方法にもいろいろあるって本当ですか?  相続人間の争いを防ぐためにできれば作っておくと安心です。遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言などの種類があります。
 自筆遺言(じひつしょうしょいごん)とは、遺言書の全文を自書(手書き)し、印鑑を押すなどの方法により作成するもので、費用はほとんどかかりませんが、紛失や偽造の危険があります。
 これに対して、公正証書(こうせいしょうしょいごん)は公証人が作成する遺言のことで、裁判所の検認が不要であり、また公証役場が保管をしてくれるなど、最も安全で確実な遺言形式です。当事務所でも、遺言は公正証書で作成することをお勧めします。
11 胎児の地位はどのようなものですか?  胎児は、原則として権利能力を有しませんが、例外的に、@不法行為による損害賠償請求権、A相続、B遺贈の場合は生まれたものと扱われます(民法721条、886条、965)。
 ただし、胎児中は相続等権利関係が未確定であるため、胎児のために遺産分割その他の処分行為をすることはできません。
12 胎児のために登記をすることはできますか?  胎児は、例外的に相続・遺贈の場合にすでに生まれたものと扱われますので、胎児名義で登記申請することが認められています。この胎児名義の登記申請は、未成年者の法定代理人の規定の類推適用により、胎児の母が行います。表示の仕方は、「亡○○妻○○胎児」と記載します。この場合、母親が懐胎していることの証明書の添付は必要ありません。
 ところで、胎児名義で登記をした後、胎児が生まれた場合はどのようになるでしょうか。
まず、生きて生まれた場合は、「出生」を登記原因として、登記名義人表示変更の登記をすることになります。この場合、母が法定代理人として申請します。
 これに対して、胎児が死んで生まれた場合は、登記原因を「錯誤」として、他の相続人名義に相続の登記の更正の登記を申請します。この場合、母が法定代理人に準じて登記義務者となります。ただし、法定代理権を証する書面はないので、添付は不要です。
13 相続税がかかる財産にはどのようなものがありますか?  被相続人が死亡した場合、基本的には被相続人保有財産すべてが対象となります。具体的には、被相続人所有の土地・建物、預貯金、株式などの有価証券、現金、事業用財産、書画・骨董などの美術品、貴金属、自動車、家具、じゅう器などの財産のほか、一定金額以上の生命保険金、退職金、慰労金などのいわゆるみなし相続財産も含まれることになります。さらに、相続開始前3年以内の贈与財産も相続税の課税価額に加算されます。
<相続税がかかる財産>
@ 不動産(土地・家屋)
A 事業用財産
B 有価証券類
C 預貯金、現金
D 家庭用財産
E その他(生命保険金※、退職金※、慰労金、立木、自動車、電話加入債権、貸付金などの債権、貴金属、美術品など)
※ 生命保険金及び退職金については、[500万円×法定相続人数]がそれぞれ非課税となります。 
※ 配偶者の税額控除は法定相続分相当額(その額より1億6千万円が大きいときは、1億6千万円)まで非課税となります。
※ 贈与税額控除、障害者控除、相次相続控除などがあります。
14 遺言(書)とはそもそも何ですか?遺言の方法にはどのようなものがありますか?  遺言(書)とは、自分の遺志を残された人たちに伝える書面による方法をいいます。残された人たち(相続人)間の争いを防ぐために、是非作成しておくことをお勧めします。
 遺言の方法としては、普通方式として3種(自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言)があり、その他特別方式として数種のものがあります。通常は、普通方式のうちどれかによることになります。
@まず、自筆遺言とは遺言書の全文を自書(手書き)し、印鑑を押すなどの方法により作成するものをいいます。費用はほとんどかかりませんが、紛失や偽造の危険があります。また、被相続人死亡後に裁判所の検認という手続が必要となります。
A次に、公正証書は公証人が作成する遺言をいいます。公正証書遺言にしておけば、被相続人死亡後の裁判所の検認が不要であり、また公証役場が保管をしてくれるなど、最も安全で確実な遺言形式です。
Bさらに、秘密証書遺言というものもありますが、これは自分で遺言内容を記載し公証人役場で封印する手続をとる方法による遺言です。いわば自筆証書遺言と公正証書遺言の中間的なものですが、この方法は殆ど利用されていません。当事務所でも、遺言は公正証書で作成することをお勧めします。
費用は多少かかりますが、安全で安心な遺言としては公正証書遺言がもっともよいでしょう。なお、一度公正証書遺言を作成しても、変更(前の遺言の撤回)は可能です(この点は、他の遺言の場合も同じ)。
15 遺言をしておいた方がよい場合はどのような場合ですか?  遺言をしておいた方がよい場合というのは意外と多くあります。代表的には、以下のような場合があります。
@ 相続人間の折り合いが良くない。
 このような場合には、相続を契機に争いが起こり易いので、遺言をしておいた方がよいでしょう。
A 夫婦の間に子がいない。
 たとえば、死亡した夫に両親も祖父母もいない場合、夫の兄弟姉妹と妻とが相続人となり、兄弟姉妹が4分の1を相続することになります。このような場合に遺言を残していれば、妻に全財産を相続させることができます。
B 内縁(婚姻届を出していない夫婦)の妻または夫がいる。
 この場合、例えば内縁の夫が死亡しても、内縁の妻は一切相続できません。遺言があれば内縁の妻にも相続させることができます。
C 先妻の子と後妻の子がいる。
 法律上、これらの子同士は、親の相続についてはまったく平等に扱われます。これを避けるためには遺言が必要となります。
D 息子の嫁に財産を残したい。
 息子の嫁は、たとえば介護に一生懸命尽くしてくれても相続人にはなれません。その方に財産を残すためには遺言が必要です。
E 個人事業や農家の経営者の場合。
 法律上は、相続人に法定相続分に応じて分割されてしまい事業の継続や農業の承継は困難となります。このようなことを避けるためには遺言で承継の方法を明らかにしておく必要があります。
16 行政書士に依頼するメリットは何ですか?  そもそも遺言書は書面にしないと遺言とは認められません。また、遺産分割協議書も書面にしていないと、不動産の所有名義の変更や銀行などの手続、相続税の申告等で大きな支障が生じます。また、例え書面を作成していても、自筆証書遺言などでは、記載に誤りがあると遺言書としての効力が認められず、個人の方が作成するのは危険があります。また遺産分割協議書の作成も大変な作業量を伴いますし、協議の内容によっては、相続人間でもめてしまうケースも多くあります。したがって、遺言書あるいは遺産分割協議書とも必ず書面で作成することはもちろん、法律の定めに従ってきちんと作成する必要があります。行政書士は法律と書面作成の専門家として、遺言書・公正証書遺言の原案及び遺産分割協議書の作成を業務としています。また、法律により守秘義務がありますので、安心してご依頼ください。
17 相続が起こりました。遺産分割協議をしたいのですが、手続を進める上で何を揃えなければなりませんか?  相続手続きというのはたいへん面倒で厄介なものですね。相続が起こった場合の遺産分割協議書作成に必要な資料を以下に紹介します。

(  )内は請求先 ※はコメントです
■ 被相続人(死亡者)関係
1 除籍謄本(市役所・町村役場) ※ 被相続人については基本的には出生から死亡まですべて揃えます。
2 改製原戸籍謄本(市役所・町村役場)
3 戸籍謄本(市役所・町村役場)
4 住民票の除籍(市役所・町村役場)

■ 相続人関係
1 戸籍謄本(市役所・町村役場)  ※ 戸籍上の相続人全員分必要。
2 印鑑証明書(市役所・町村役場)
3 戸籍の附票
4 住民票(本籍地記載)(市役所・町村役場)
5 印鑑証明書(市役所・町村役場) ※ 印鑑証明書は遺産分割協議書・相続登記用は期限なし。金融機関用は1〜3ヶ月内のものとされる。

■ 作成書面
1 相続関係説明図
2 遺産分割協議書

■ 相続財産関係
1 土地・家屋名寄帳兼課税台帳(写)(市役所固定資産税課)
2 固定資産土地課税台帳登録価格証明書(市役所・町村役場) ※ 6・7月以降は登記申請日における当該年度のもの。4月は注意。
3 固定資産家屋(補充)課税台帳登録価格証明書(市役所・町村役場)
4 土地登記簿謄本(法務局)
5 建物登記簿謄本(法務局)
6 公図(法務局)
7 建物図面(法務局)
8 地積測量図(法務局)
9 路線価図(写)(税務署)
10 金融機関残高証明書(各金融機関)
11 金融機関名義変更用紙(各金融機関)
12 生命保険金請求用紙(各保険会社)

 以上のように、実に多くの書面・資料を揃えなければなりません。
相続人が独力でできないことはありませんが、多大な労力を要します。
確かに、費用はかかりますが、その負担を軽減するために専門士業があるのです。
行政書士は遺産分割協議書や相続関係説明図の作成を業務としているため、以上の資料収集も可能です。
相続手続きで困ったなという方は当事務所までお気軽にご相談ください。

エンディングノート

質 問 回 答
1 遺言とエンディングノートの違いは何ですか?  「エンディングノート」とは、自分の終末期や死後に家族にこうしてほしいという希望や、生い立ち、配偶者や子への思いなど伝えておきたいことを記しておくノートのことです。

遺言書との違い
1 遺言書は遺言者の意思に法的な効力(拘束力)を認めますが、エンディングノートに記載された内容に法的な効力(拘束力)はありません。
2 遺言書でできることは、民法または法律で決められています。
すなわち、@認知、A未成年後見人の指定、B後見監督人の指定、C遺贈、D遺贈減殺方法の指定、E寄附行為、F相続人の排除及び排除の取り消し、G相続分の指定及び指定の委託、I特別受益者の持ち戻し免除、J遺産分割方法の指定または指定の委託と遺産分割の禁止、K共同相続人間の担保責任の指定、L遺言執行者の指定及び指定の委託、M信託の設定、などです。「付言」事項として、遺言者の希望を遺言書に書くこともできますが、これはあくまで希望であり、拘束力をもつものではありません。
 これに対し、エンディングノートには記載事項の限定はありません。自分の思い、希望を自由に書いてもかまいません。確かに法的な効力はありませんが、ご家族に本人の生前の意思を明確に伝えるという点で、現実には、後の揉め事を回避する働きを持ちます。例えば、自分のお葬式の方法(費用、家族葬、連絡先、音楽など)、埋葬の方法(墓の希望、散骨の希望など)、さらには終末期医療の選択や、尊厳死、臓器提供の有無なども記載することができ、治療を見守る家族にとってもあわてないようにすることができます。さらに、遺影使用して欲しい写真を用意しておいもよいでしょう。思った以上にいざというときの遺影用の写真が見つからないことが多いものです。
3 エンディングノートから遺言書の作成へ
 いきなり遺言書を書くのは抵抗もある方も多いと思います。そのようなときは、まずエンディングノートを作成して、徐々に思いが整理されてきたときに、遺言書を作成したらいかがでしょうか。
2 エンディングノートには何を書くのですか?  書店などに行くとかなり多くのエンディングノートが販売され、かえって混乱してしまいそうです。しかし実は、どの市販本でも大体以下の内容で共通しています。以下、エンディグノートに記入する項目の例をあげます。
1 自分の経歴と人生の思い(自分史)
2 終末期医療についての希望、告知の可否、治療法
3 尊厳死や臓器提供についての希望、献体意思の有無
4 臨終に立ち会ってほしい人、もしもの時に連絡してほしい人
5 通夜・葬儀に呼んでほしい人、訃報を知らせてほしい人
6 葬儀についての希望
7 葬儀費用の希望
8 埋葬法(お墓)についての希望
9 遺言書の有無と保管場所について
10 形見分け品についての希望
11 遺影用写真
12 その他

※作成方法
 ノートに筆記具(万年筆など)で書いてもよいですが、パソコンのできる方は、まずはパソコンで下書きを作成し、徐々に書き上げていってもよいでしょう。最初はあまり力まずに、自分史や日記などを書くつもりでスタートするのがよいかと思います。
 エンディング・ノートの作成で悩んだら、当事務所にご相談ください。


論点研究

目 次

Q1 特別受益者への贈与は遺留分減殺の対象となるのか?

Q1 特別受益者への贈与は遺留分減殺の対象となるのか?

A1 この問題については、2つの論点がありますので、以下順に述べてゆきます。
 
(1)論点1
 遺留分の算定の基礎に共同相続人に対する特別受益である贈与を加算するかについて、通説は、民法1030条に定める要件に関係なくすべて加算されるとしています(もちろん、加算されないとする反対説もあります)。
通説は理由を次のように述べています。すなわち、民法903条が準用されるのは、特別受益たる贈与は「相続分の前渡し」としての性質をもつ以上、共同相続人間の公平という要請から、法定相続分の一部である遺留分の計算においても計算上相続財産を構成するものとして扱う必要があるからだ、と。
 
(2)論点2
 特別受益とされるすべての贈与が、遺留分の算定の基礎財産に加算されるとしても、さらにそれが減殺の対象にもなりうるのかについて、学説は対立しています。
 肯定説(通説)は、特別受益たる贈与は遺留分算定の基礎に算入される以上、減殺の対象にもなりうるとしています。
その理由は、遺留分制度の趣旨から、特別受益たる贈与が遺留分算定の基礎に算入されるにもかかわらず、減殺の対象とされないとすれば共同相続人間の不公平が是正されなくなってしまうからだ、と主張します。
 これに対し、反対説である否定説は、特別受益たる贈与はすべて遺留分算定の基礎財産に算入されるとしても、そのうち減殺の対象となるのは、相続人以外の者に対する贈与と同じく、民法1030条の要件を満たす贈与に限られるとします。
その理由は、遺留分権利者の遺留分を保障するための相続財産の減少を防止することを目的とす遺留分の減殺と、相続分の前渡しによって失われた共同相続人間の公平の回復を目的とする特別受益の持戻しとは制度的意義が異なる、だから、あくまで減殺の対象となるのは民法1030条の要件を満たした場合に限られると主張します。
 「共同相続人間の不公平の是正」を重視すれば肯定説ということになりますが、しかし、これでは民法1030条が減殺されるべき贈与を限定した意味が没却されてしまうと考えれば否定説ということになります。
 
(3)判例
 さて、判例はというと、最判平成10.3.24は通説とほぼ同様の判断を示しました。判旨によれば、「民法903条1項の定める相続人に対する贈与は、右贈与が相続開始よりも相当以前になされたものであって、その後の時の経過に伴う社会経済的事情や相続人など関係人の個人的事情の変化をも考慮するとき、減殺請求を認めることが右相続人に酷であるなどの特段の事情のない限り、民法1030条の定める要件を満たさないものであっても、遺留分減殺の対象となる」としました。共同相続人間の公平を図る遺留分制度の趣旨を重視した結果といえます。ただし、「特別の事情がある場合」は遺留分減殺の対象とはならないことも認めており、完全に通説と同じというわけではありません。
 ちなみに、同事件の第一審は、贈与が遺留分を侵害する事実を知っていたと推認できるとして、遺留分権者の請求を認めましたが、第二審(原審)は、損害を加えることを知っていたとはいえず、民法1030条及び1031条により、遺留分減殺請求は認められないとしていました。

(4)結論
 判例・通説の立場としては、特別受益たる贈与は、それ以外の贈与と区別して民法1030条の要件を満たさなくても、すなわち、1年以内または知っていたという要件がなくても遺留分減殺請求の対象となることになります。

[参考文献] 
民法(9)相続[第4版増補補訂版]・有斐閣双書・251頁以下、
別冊ジュリスト162・家族法判例百選[第6版]・188頁以下(浦野由紀子)

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